マイニングプールはどのように運用されていますか
マイニングプール(Mining Pool) は、複数のマイナー(採掘者)が計算リソースを結集して暗号通貨のマイニングを行い、得られた報酬を参加者間で分配する仕組みです。
個人ではブロック生成が難しい場合でも、プールに参加することで安定した収入を得られるため、現在の暗号通貨マイニングの主流となっています。

マイニングプールの運用プロセス
1. 参加者の接続
マイナーは、マイニングプールのサーバー(通常は Stratumプロトコル を使用)に接続し、作業指示を受け取ります。

接続には、ウォレットアドレス や Worker名(マイナー識別用ID) を登録します。

2. 作業の割り当て(ジョブ分配)
プールサーバーは、ネットワーク(例:BitcoinやMoneroのブロックチェーン)から最新のブロック情報を取得し、小さな計算タスク(シャア) に分割します。

各マイナーには、難易度調整された計算問題 が割り当てられ、ハッシュ計算(Nonce探索) を行います。

3. 有効な計算結果(シェア)の提出
マイナーは、割り当てられた範囲で正解(ブロックヘッダーのハッシュ値がターゲット以下になるNonce)を探します。

完全なブロック生成に至らなくても、「シェア」(部分的な解答) を提出することで、貢献度を証明します。

4. ブロック生成と報酬分配
ブロックが見つかった場合、プール運営者は報酬(例:Bitcoinなら6.25 BTC + 取引手数料)を受け取ります。

報酬は、参加者の 「シェア提出率」 に基づき分配されます(後述の分配方式参照)。

マイニングプールの報酬分配方式
参加者への報酬分配方法には主に以下の方式があります。

PPS (Pay Per Share) 提出された「シェア」ごとに固定報酬を支払う。
プールが報酬の変動リスクを負う。 安定収入  手数料が高い傾向

FPPS (Full PPS) PPS + 取引手数料も分配する仕組み(Bitcoinなどで採用)。
より高収益  計算が複雑

PPLNS (Pay Per Last N Shares)
直近のN個のシェア貢献度に応じて分配。運が良いと高報酬、悪いと低報酬。
長期参加者に有利  収入が不安定

PROP (Proportional) ブロック生成時のシェア貢献度に応じて分配。
シンプル  偶然性が強い

マイニングプールの運営コストと収益源
1. 運営コスト
サーバー維持費(高トラフィックに対応するため高性能サーバーが必要)

開発費(独自のマイニングソフトや詐欺防止システムの構築)

電力・冷却コスト(大規模プールは自社でマイニングファームを併設する場合も)

2. 収益源
手数料(参加者の報酬から1~3%程度を徴収)

独自マイニング(プール運営者自身もマイニングに参加)

投機・ストラテジー(報酬を市場で売却し利益を得る)

主要なマイニングプールの例(2024年現在)
Bitcoin: Foundry USA, Antpool, F2Pool

Ethereum (PoS移行後は別): Ethermine, F2Pool

Monero: MineXMR, SupportXMR

まとめ
 マイニングプールは、個人マイナーの計算リソースを集約し、報酬を分配するプラットフォーム。
 分配方式(PPS/PPLNSなど)によって収益の安定性が変わる。
 プール運営者は手数料収入や自社マイニングで利益を得る。

現在は、Bitcoinの半減期やPoS(権利証明)への移行で収益性が変化していますが、プールを活用すれば小規模マイナーでも持続可能な採掘が可能です。
Coinhiveとは何ですか また2018年のCoinhive事件の概要を教えてください
Coinhive(コインハイブ) は、2017年に公開された ブラウザ上で暗号通貨「Monero(XMR)」をマイニングするJavaScriptライブラリ です。
ウェブサイトの運営者が、訪問者のCPUリソースを利用してMoneroをマイニングし、広告収入に代わる収益源として利用できる仕組みでした。

Coinhiveの特徴
訪問者がサイトを閲覧している間、バックグラウンドでマイニングが実行される。

サイト運営者は設定により、ユーザーに許可を得てからマイニングを開始することも可能だった。

当初は合法な収益化ツールとして注目されたが、ユーザーの同意なしにマイニングを実行する悪用事例 が急増した。

2018年の「Coinhive事件」概要
2018年、Coinhiveを悪用した サイバー犯罪事件 が相次ぎ、日本でも大きな話題となりました。主な事件の流れは以下の通りです。

1. 事件の内容
ユーザー無許可のマイニング(クリプトジャッキング):
複数のウェブサイトやポルノ動画配信サイトが、訪問者のPCやスマホに気づかれないようにCoinhiveを仕込み、Moneroを不正にマイニングしていた。

公共サービスへの攻撃:
日本の地方自治体のウェブサイトや企業サイトがハッキングされ、訪問者のCPUリソースを勝手に使われる事例が発生。

マルウェアとの連動:
一部のウイルス(Emotetなど)がCoinhiveスクリプトを組み込み、感染PCでマイニングを実行するケースも確認された。

2. 逮捕者(日本での事例)
2018年6月、神奈川県警 は、Coinhiveを悪用した 日本初の逮捕者 を出しました。

容疑:
アダルト動画サイトを運営し、訪問者のPCで無断でマイニングを行い、約 7,000円分のMonero を不正取得した疑い。

適用法令:
「不正指令電磁的記録供用罪」(刑法第234条の2)(ユーザーのデバイスに無断でプログラムを実行させた罪)。

3. Coinhiveの終焉
2018年以降、Moneroの価格下落や規制強化により、Coinhiveの収益性が低下。

2019年3月、Coinhiveは サービス終了 を発表。

現在は類似ツールも減少しているが、クリプトジャッキングの脅威は続いている。

まとめ
Coinhiveは本来、合法な収益化ツールとして開発されたが、ユーザー無許可での悪用が社会問題化。

日本では 「不正指令電磁的記録供用罪」 で摘発された初の事例となり、サイバー犯罪の新たな手法として注目された。

現在もブラウザ経由の不正マイニングには注意が必要。

参考までに、当時は 「このサイトはマイニングを行います」と明記するサイトも存在 しましたが、無許可での実行は世界的に規制が進んでいます。