コインチェック・ネム事件はその後どうなった?
2018年に発生した「コインチェック・NEM(XEM)流出事件」は、仮想通貨史上最大級のハッキング事件の一つでしたが、その後、関係各社やNEM財団、司法の動きなどによって様々な展開がありました。以下、事件後の経緯と現状を整理します。

1. 事件の概要(2018年1月)
被害額:約580億円(当時レートで約5億2,600万XEM)。

原因:コインチェックのNEM管理用ウォレットの秘密鍵がインターネット接続されたサーバーに平文で保存されていたため、ハッカーに奪取された。

対応:

NEM財団はハッキングされたXEMに「タグ付け」を実施(マーキングによる追跡)。

コインチェックはユーザーへ全額を自社負担で補償(日本円で約460億円)。

2. 事件後の展開
(1) コインチェックの対応と経営再編
マネックスグループによる買収(2018年4月)

経営陣が刷新され、マネックスグループ(オンライン証券会社)の子会社に。

セキュリティ対策の大幅強化(マルチシグウォレットの導入など)。

金融庁の業務改善命令(2018年6月)

コインチェックは一時的に新規登録停止。2021年1月に改正資金決済法に基づく登録済み事業者として再スタート。

(2) NEM財団の動向
ハッキング資金の追跡と凍結

タグ付けされたXEMの大部分は取引所経由で換金困難になり、一部は海外の取引所で流用されたとされる。

NEM財団はブロックチェーン分析企業と協力し、資金移動を監視。

Symbol(XYM)への移行(2021年)

NEMの新ブロックチェーン「Symbol」がリリースされ、XEM保有者はXYMをスナップショットで受け取れた。

(3) 司法の動き
ハッカーの特定と捜査

国際刑事警察機構(ICPO)や各国当局が協力し、一部の資金が海外取引所を通じて換金された痕跡を追跡。

2021年にはフランス人ハッカーが逮捕されたが、直接事件に関与したかは不明。

コインチェック元役員の刑事裁判(2022年~)

金融商品取引法違反(顧客資産の管理不備)で元代表取締役らが起訴され、2023年7月に東京地裁で有罪判決(執行猶予付き)。

3. 現在の状況(2024年時点)
コインチェック:

マネックスグループ傘下で経営安定化し、東証プライム上場を果たす(2023年)。

NEM(XEM)の取り扱いを継続(セキュリティ強化済み)。

NEM(XEM)とSymbol(XYM):

XEMはNIS1チェーンで存続、XYMは企業向けブロックチェーンとして別途運用。

流出事件の影響で信用を損ねたが、技術的には引き続きPoIやスマートアセットなどの特徴を維持。

流出XEMの行方:

タグ付けされたXEMの大半は移動が止まっており、実質的に市場に出回らず。

4. 事件の教訓と業界への影響
セキュリティ基準の厳格化:

日本の仮想通貨取引所は金融庁の指導でコールドウォレット保管が義務化。

補償の重要性:

コインチェックの全額補償は業界でレガシーとなり、顧客保護の基準となった。

NEMの評価:

技術自体は評価されるが、事件のイメージが残り、時価総額はピーク時(2018年1月)から大幅下落。

まとめ
コインチェック事件は「秘密鍵管理の甘さ」が招いた事例として、仮想通貨業界全体にセキュリティ強化の契機を与えました。NEM(XEM)はその後も開発が続いていますが、事件の影響は少なからず残っています。一方、コインチェックは経営再建に成功し、現在は国内主要取引所の一つとして運営されています。