マルチシグウォレットとは?
マルチシグウォレット(Multi-Signature Wallet)とは?
マルチシグ(Multi-Sig)は、仮想通貨のウォレット(財布)において、複数の秘密鍵の署名(承認)を必要とするセキュリティシステムです。
通常のウォレット(シングルシグ)では1つの秘密鍵で資産を動かせますが、マルチシグでは「2/3」や「3/5」など、あらかじめ設定した数の承認がないと送金できません。

マルチシグの仕組み
例)「2-of-3 マルチシグ」の場合:

3人がそれぞれ秘密鍵を持ち、うち2人の署名がないと送金できない。

1人がハッキングされても資産は盗まれない。

マルチシグのパターン例
方式 説明 用途例
2-of-2 2人全員の署名が必要 厳重な資産管理(例:会社の大口資金)
2-of-3 3人中2人の署名でOK バランス型(コインチェック事件後の対策)
3-of-5 5人中3人の承認が必要 分散型組織(DAOなど)
マルチシグのメリット
ハッキング耐性

1つの鍵が漏れても資産を守れる(コインチェック事件のような単一鍵管理の脆弱性を解消)。

内部不正の防止

1人で勝手に送金できない(例:会社の資金を独断で移動不可)。

冗長性(バックアップ)

鍵の1つを紛失しても、他の鍵で復元可能。

マルチシグのデメリット
複雑な管理

複数の鍵を安全に保管・共有する必要あり。

復旧の手間

鍵を失うと、設定次第で資産が動かせなくなる可能性も。

手数料が高め

トランザクションサイズが大きくなるため、ネットワーク手数料が増加。

マルチシグが使われる主な場面
取引所のセキュリティ対策(例:コインチェック事件後、多くの取引所がマルチシグ導入)

企業の資金管理(複数の役員の承認が必要)

個人の高額資産保護(家族や信頼できる人と鍵を分散)

スマートコントラクト(例:イーサリアムのマルチシグウォレット)

マルチシグ vs 他のセキュリティ方法
方式 特徴 マルチシグとの違い
シングルシグ 1つの秘密鍵で管理(シンプルだが危険) マルチシグより脆弱
コールドウォレット オフライン保管(ハッキングされないが、送金に手間) マルチシグと併用可能
MPC(マルチパーティ計算) 鍵を分割し、計算で署名(マルチシグより高速で低コスト) 新しい技術
コインチェック事件後のマルチシグ導入
事件後、コインチェックはマルチシグ+コールドウォレットを併用し、セキュリティを大幅強化。現在は、日本の取引所の多くが同様の対策を実施しています。

まとめ
マルチシグは、「資産を1人や1カ所に依存させない」ことで安全性を高める技術です。企業や取引所だけでなく、個人でも高額の仮想通貨を保有する場合は検討する価値があります。

補足:

マルチシグをサポートするウォレット例:Ledger(レジャー), Trezor, Electrum(ビットコイン), Gnosis Safe(イーサリアム)など。

イーサリアムのスマートコントラクトでもカスタムマルチシグが構築可能。